「残業ありきの正社員」より「残業なしの派遣+複業」のほうが未来は明るい?






このつぶやきを見て、気になったので賞与・各種手当を含めた筆者の時給を計算してみた。
 

結果

結果は以下のとおり

年間残業0時間の場合 2,638円/h
年間残業480時間の場合 2,475円/h
年間残業720時間の場合 2,417円/h
年間残業960時間の場合 2,370円/h

残業すればするほどに、さ、下がっているではないか!これをグラフにしてみると……


横軸: 残業時間 縦軸: 時給

た、単調に減少している……一目瞭然で、なんとも切ない気持ちになってくるではないか。
 

計算からわかること

計算の詳細は付録(記事末)に譲るが、今回の計算から以下のことがわかった:

  • 残業すればするほど時給が下がる(残業0時間が時給最大)
    ※ただし(残業0時間でのボーナス・諸手当込の時給)≧(残業単価)=1.25*(基本給に対する時給)を満たす場合
  • (残業時間)→∞の社畜極限をとると、時給は残業単価に収束する

 

どうすれば時給を上げられるか

では、どうすれば時給を上げられるか。

(時給)=(年収)÷(1年間の総労働時間)…(★)

時給は(★)で表されるため、シンプルに分子を大きく分母を小さくすれば時給は上がる。すなわち次の通りだ。

  • 残業時間を減らして総労働時間を減らす
  • 有休消化率を上げて総労働時間を減らす
  • 社内で高い評価を得て昇給するなり副業するなりして年収を増やす



ちなみに、先ほどの時給の計算では有休消化率を50%として計算したが、有休消化率を100%とすると、筆者の時給は次のように変わる。

年間残業0時間の場合 2,761円/h(+123円)
年間残業480時間の場合 2,564円/h(+89円)
年間残業720時間の場合 2,495円/h(+78円)
年間残業960時間の場合 2,439円/h(+69円)


 

正社員は悲観すべきではない

さて、冒頭のつぶやきに話を戻そう。


 

①時給1,750円、月10日休んで手取り25万円?

これは甚だ怪しい。時給1,750円、1日8時間労働で月に20日間働くとして、給料が280,000円。手当はいかほどつくものか。
給与から社会保険料、所得税、住民税を引くと、月あたりの手取りはせいぜい22万円程度ではないだろうか。
参考「年収330万円の手取りと住民税&所得税はいくら?【2018年版の計算結果】」
 

②複業で正社員の残業単価以上に稼げる人はごく一部の限られた人

「残業ありきの正社員」でも残業代が適正に支払われる限り、年収は増える。たしかに残業なしの派遣は余った時間を活用した「複業」によって、 “会社の名前に依存せず” 稼ぎ、年収を増やすことができるかもしれない。しかし、果たしてその複業において時給1,750円以上、ひいては正社員の残業単価以上に稼ぐことができるだろうか。それができるのはごく一部の限られた人ではないだろうか。
時給という指標を持ち出して未来の明るさを語る以上、複業における時給が本業以上とならない限り、未来が明るいとは言えないだろう。それに、残業ありきの正社員だって場合によっては複業できるんじゃ?



 

③残業なしの派遣+複業の方が未来は明るい?

正社員であれば、派遣社員に比べて賞与や諸手当での収入アップが見込めるほか、長年勤めればその分の昇給が期待できる。時給が上がるのだ。辞めるときには退職金も出る。派遣社員は派遣法により数年でいわゆる「派遣切り(雇い止め)」に合うのが通例で、退職金をもらえるのは限られた場合のみだ。それでも「残業なしの派遣+複業」の方が未来が明るいと本当に言えるだろうか。
 

④まとめ

正社員で、賞与がない・残業代が適切に支払われない・仕事量が多すぎて過労死寸前などの場合は、転職をした方がいいかもしれない。
しかしそういった事例を除いて考えれば、時給1,750円の派遣求人が出たからといって、昔よりも副業によって稼ぎやすくなったからといって、それをもって「『残業ありきの正社員』より『残業なしの派遣+複業』のほうが未来は明るいかも」と言ってしまうのは早計というか、風説の流布に近いものを感じる。あまりに博打だ。
残業ありきの正社員は、たしかに派遣に比べて自分の時間を持ちにくいし、派遣に比べて責任が大きく(その分だけ派遣に比べて裁量の大きさもあるはず)、ストレスフルだと思う。
しかし、だからといって「残業ありきの正社員」よりも時給1,750円の「残業なし派遣社員+複業」の方が未来が明るいと言えるだけの根拠を今のところ筆者は見出せない。

やはり筆者としては、賞与・諸手当を総合した場合に、より時給が高い「残業ありきの正社員」にしがみつき、投資で殖やしながらセミリタイアに向かって進んでいきたいと思う。

最後に昇給により1年で年収が15万円アップする場合での時給の推移(x年後の時給)を掲載する。
※有休消化率は100%

もしも皆が皆、うまい具合にこんな右肩上がりのグラフになるなら、そもそも「残業なしの派遣+複業」の方が未来は明るいなどという話が出てくることはないのだろう。あれこれと書いたものの、つまるところ安易に正社員の立場を捨てるもんじゃないと自分に言い聞かせたかっただけかもしれない。
なお、休日・深夜の残業だったり月の残業時間が60時間を超えるとかかってくる割増率は本記事では考慮していない。残業時給を一律1.25倍で計算しているため、実際の残業時給はもう少し高くなるだろう。
 

計算(付録)

残業時間をx時間(x≧0)とすると、時給f(x)は次式で表される:

f(x)=(A+Bx)/(C+x)

ただし、
A: 残業0時間での年収, B: 残業単価, C: 残業0時間での年間総労働時間とする。

残業時間の増加に伴い時給が単調減少する条件は、x≧0に対してf'(x)≦0となることであり、次の不等式で示される:

B≦A/C=f(0)…(☆)

A/Cは残業時間0時間の場合の時給f(0)であり、f(0)が残業単価(残業時の時給)以上である場合に、時給が単調減少となることがわかる。
ここでD: 基本給に対する時給とすると、
A=C*D+(年間賞与の合計)+(年間諸手当の合計)
B=1.25*D
と表すことができるので、(☆)は次のように書き直すことができる:

D+{(年間賞与の合計)+(年間諸手当の合計)}/C≧1.25*D…(☆’)

ここで左辺第二項の{(年間賞与の合計)+(年間諸手当の合計)}/Cは賞与と諸手当に関する時給であるため、時給が残業時間の増加に伴い減少する条件は、次のように言い換えることができる。

「残業単価(1.25*D)」が「残業0時間でのボーナス・諸手当込の時給」以下であること…(☆”)

なお、x→∞の社畜極限でf(x)→B(残業単価)となる。
(☆”)が成立する場合、残業時間の増加に伴い時給は単調減少する。筆者の基本給ベースで考えれば、たとえば賞与が年間で基本給2ヶ月分以上出て、かつ諸手当が月2万円以上出ていればこの条件を満たす。逆にこの条件を満たさず、残業単価の方が高く、残業すればするほど残業単価に漸近していくような給与体系の企業は、給与の面からはブラック臭がすると言ってよさそうなものであるが、いかがだろう。

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